ピロリ菌による病気のリスク
胃がんとの関連性
世界保健機構(WHO)では、ピロリ菌感染は発がん因子として最大のリスクであるとの見解を示しています。ピロリ菌の感染によって萎縮性胃炎(胃粘膜の萎縮)が起こり、胃がんの発生に影響を及ぼしてしまうことが明確になっています。この萎縮性胃炎は「胃がんの温床」とも言われるほど強い関連性があります。実に、胃がんを患った90%以上の方が、ピロリ菌の感染が原因であるとの見解も出されています。
ピロリ菌が作り出す「ウレアーゼ」という酵素によって、胃の中の尿素が反応してアンモニアを発生させます。これが、胃の粘膜を傷つけていく要因です。
胃がんだけではなく、
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
などの病気になるリスクが高くなるため、注意が必要です。
ピロリ菌感染の正体
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)は免疫力が弱いとされる4〜5歳以下の幼少期に感染しやすいことが分かっています。昔は井戸水等を利用していたこともあり、不衛生な水によって感染したと考えられていました。しかし、現代に置いては衛生環境が整っているため、そのような感染は考えにくいとされています。
一方、自身のご家族がもともとピロリ菌を保有していて、幼少期に移っているケースが大いに考えられます。ご家族がピロリ菌に感染していた経緯があり、幼い頃、生活を共にしていた経験がある方は要注意です。
ピロリ菌検査 推奨度チェック
チェック項目
- 家族などに胃がんの方がいる
- 胃痛を感じることがある
- 胃に不快感がある
以上に該当する方は、一度、検査を受けることをおすすめします。
10歳を超えてピロリ菌に感染することはほとんどないと考えられています。つまり、中学生以降の方が一度検査をして陰性であれば、その後、感染することは考えにくいのです。
ピロリ菌検査の方法
内視鏡を使う検査方法
- 迅速ウレアーゼ法
- 組織検鏡法
- 培養法胃潰瘍
など、内視鏡を使い胃粘膜の一部の組織を取って行う検査があります。
内視鏡を使わない検査方法
内視鏡を使わなくとも
- 血液
- 吐く息
- 便や尿
によって、ピロリ菌の有無を検査することができます。
尿素呼気試験
専用の袋に息を吐いていただき、呼気を集めます。そのあと、診断薬を服用していただいた後に、再度、袋に息を吐き呼気を集めます。
服用前後の呼気を比較するだけで簡単にピロリ菌の有無を調べることができ、精度も高い診断法です。
抗体測定法
ピロリ菌に感染している方は、菌に対するための抗体を持っています。
血液や尿などを検査することで、その抗体を測定する方法です。
便中抗原測定法
便中のピロリ菌の抗原の有無を調べる方法です。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌検査で陽性反応が出た方
内視鏡検査をしていない方
ピロリ菌検査によって陽性反応が出た方で、内視鏡検査をされていない方は、一度、内視鏡を使って胃の状態を見させていただきます。
- 萎縮性胃炎
- 胃潰瘍
- 十二指腸潰瘍
など、ピロリ菌の感染よって、胃に何らかの症状が起こっている可能性があるため、しっかりと検査しましょう。
すでに内視鏡検査をしている方
すでに胃を検査して、状態が確認できている方は、除菌治療に進みます。
除菌治療のながれ
当クリニックでは、以下の段階を追って、ピロリ菌の除菌治療を進めていきます。
一次除菌(保険診療)
- 抗生剤(2種類)
- 胃酸を抑える薬
を、1日2回、7日間飲み続けていただきます。
★ 約90%の方は、一次除菌で終了(除菌成功)します。
二次除菌(保険診療)
一次除菌後、改めてピロリ菌の有無を検査します。
引き続き陽性反応が出た場合は、抗生剤の種類を変更し、改めて1日2回、7日間飲み続けていただきます。
★ 一次除菌同様に、約90%の方が、二次除菌で終了(除菌成功)します。
三次除菌(自費診療)
全体の約1~3%程度ですが、稀に二次除菌でも失敗してしまうケースがあります。その方は三次除菌を受けていただくことが可能です。
ただし、三次除菌は保険対象外となり、自費での治療となりますのでご了承ください。